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撮影日記①「芋を干す、田を畝る、プレート用の木を切り出す」


10月20日に行われた「第9回 美炎・馬頭琴の調べ」から始動した『里守人と馬頭琴(仮題)』映像制作プロジェクト。いよいよ梅平のみなさんの日々の暮らしの撮影が始まりました。


2019年12月16日〜17日の2日間、纐纈、石井の二人は、午前3時に東京を出発。梅平へ着いたのは6時。大金昭一さん宅の干し芋づくりに伺いました。あたり一面、霜で白いベールに覆われ凍てつく中、昭一さんは日の出前にかまどに火入れしました。お湯が沸き、勢いよく蒸気があがってきたところで、サツマイモを並べたせいろをのせてふかし始めます。このサツマイモは、昭一さんの畑で収穫した紅あずま。30分おきにせいろを重ねていき4段。薪の火でじっくり1時間かけて蒸しあげていきます。待つ間、自家製の甘酒をいただきながら、干し芋づくりのお話しを伺いました。「干し芋づくりはいつから始まるんですか?」という何気ない質問に「芋の苗床をつくるための落ち葉掃きが2月からだからね。でも種イモはその前の年に収穫だから、それを考えると…」という想定外のおこたえ。このすべて手作りの干し芋づくりは、さかのぼれば種イモを採る前年の秋から始まっているのです。


蒸しあがったサツマイモは、娘の初枝さんが皮を丁寧に剥いていきます。そのお芋を、昭一さんが手作りのスライサーでスライスし、一枚ずつ並べていきます。ご家族で干し芋づくりの名産地、茨城に何度となく足を運び、その工程を見学させてもらったそうです。そこでのアドバイスを取り入れながら、試行錯誤を重ねて現在の作業に至っています。干し場のハウスの中には、あと数日で完成のものから干したばかりのものまで、美しいグラデーションで並び、あたりにはあまーい香りが漂います。すべての行程が、時間をかけて手作業で行われる大金家の干し芋づくり。「好きなだけ食べていってくださいね。」とおっしゃっていただきましたが、あまりのありがたさに、食い意地の張ったわたしたちも、じっくりゆっくり噛みしめていただきました。土と水と太陽の光、木の熱とそして人の温かい手が加わってできあがった干し芋は、滋味豊かで、体にじんわり染み込む甘みは、他のどこにもない世界でたったひとつの味わいでした。


(干し芋づくり 撮影:廣田美千香)


2ヶ月ぶりの棚田では、大金茂さんが田を畝る作業をしていました。土が凍る前に、秋に収穫し終えた稲の藁を田んぼに漉き込む作業です。これから春まで、棚田の土はおやすみです。一緒にいた廣田美千香さんに教えていただきふと見上げると、葉の落ちた木に天蚕の繭が。羽化できなかったものがいくつか残っていました。

(棚田にて 撮影:廣田美千香)


ヒロクラフトさんの工房では、廣田充伸さんが木のプレートの制作をしていました。木のプレートやボールといえば、ロクロを使って成形されることが多いようですが、ヒロクラフトさんでは、板から切り出した後は、グラインダーやノミ、彫刻刀などを使って成形します。植物性のオイルで仕上げたプレートは、軽くて木のぬくもりがそのまま伝わってくるような手触りがして、こういう物を日々の生活で使えたら、さりげないけれど大きな変化が生まれるのだろうと思います。


そのほかにも、いくつかのお家を訪ねてご挨拶させていただきました。これから一年かけて、梅平のみなさんの暮らしや歴史を学びながら撮影を重ねていきたいと思います。次回は2月にまた伺いたいと考えています。


(2019年12月16日〜17日撮影報告動画 撮影:石井和彦 編集:纐纈あや)

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