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撮影日記② 大金貞子さんのシモツカレづくり


「美炎・馬頭琴の調べ」10回記念ドキュメンタリー映像制作プロジェクト、記録撮影班の纐纈です。撮影報告の時間が空いてしまいましたが、冬から春にかけての報告を随時アップしていきたいと思います。 2月最初の「初午」の日は、京都の伏見稲荷大社をはじめとする全国の稲荷神社で祭事が行われます。北関東地方の郷土料理シモツカレは、この初午の日に作っていただく習慣があるとのことで、梅平の大金貞子さんのお宅でその様子を拝見させていただきました。


お孫さんの里名さん、ご親戚の大金初枝さん、大金重晴さん、廣田美千香さんと一緒に、シモツカレづくりが始まりました。 まず驚いたのが、貞子さんが愛用している鬼おろし器。見たこともないような厚みの貫禄あるおろし器は、いつから使っているかは正確にはわからないという年代物で、まさに鬼おろしという名にふさわしい使い込まれた道具でした。


シモツカレの作り方はいたってシンプル。大根2本、人参2本をひたすら鬼おろし器でおろす、おろす。そこに塩引き鮭の頭二つと皮を剥いた大豆を混ぜ、炭火にかけること小一時間。グツグツ煮えたら、最後に酒粕を入れて、貞子さんのところでは、だし醤油を回し入れて味をととのえます。昔から作られてきたこのお料理は、鮭の頭はお正月の残り、大豆は節分に炒った福豆を無駄にせず、季節の野菜と煮込むというもので「シモツカレを7軒廻って食べると中風にならない」と言われていたそうです。


(写真撮影:廣田美千香)


実は、人気のない郷土料理のワーストに入るというシモツカレ。その見た目や、酒粕の独特な味わいが苦手な人もいるようで、地元の学校の給食に出ても残す人がけっこういるのだそうです。今では食べやすいように酒粕を入れないシモツカレが作られることも多いようで、この日も入れるかどうか、貞子さんはみなさんの意見を聞きながら少々迷っていらっしゃいましたが、本来の味を!ということで酒粕投入。


私たちも夕飯にお招きいただき、シモツカレをいただきました。鮭の旨味が大根、人参、大豆にぎゅっと滲み出し、胃腸に優しくおさまる感じでとてもおいしかったです。熱々もおいしいのですが、冷たくなったものもあったかいご飯との相性抜群、箸が進みます。今では初午の日だけでなく年中作られるお惣菜として常食になっているとのこと。


貞子さんが作るシモツカレのおいしさの秘訣は、お鍋いっぱいに作って、2月の寒空のもと炭火でコトコト、グズグズ煮込むことにありそうです。それにしても、貞子さんと里名さんのお二人が一緒にいる時の愛情に満ちた雰囲気が、とても印象的でした。おばあちゃんの料理が大好きな里名さんは、伸びやかで笑顔が素敵な17歳でした。


(写真撮影:廣田美千香) ドキュメンタリー映像制作プロジェクトの応援をお願いいたします♪

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